土壁のようなキャンバスに描かれた、素朴で神聖な絵に心を奪われたことはありませんか。
それはインドの先住民族に伝わる「ワルリー画」。
数年前から訪れてみたかった場所へ、ようやく足を運びました。
新潟県十日町市の山奥、雪と静寂に包まれた場所にあるミティラー美術館です。

雪に包まれたミティラー美術館の入口。廃校を活用した建物がそのまま残されています。
ミティラー美術館とは?
ミティラー美術館は、新潟県十日町市の豪雪地帯にあるインド民族画専門の私設美術館です。廃校となった小学校を活用し、自然と共に在る形で運営されています。
館長の長谷川時夫さんは、この地に定住しながら自然と共鳴し、インドからアーティストを招いて滞在制作を行う「生きた美術館」をつくりあげました。

ミティラー美術館館内での展示作品と解説の様子。インド民族画の世界観を間近で体感できる。

美術館の敷地に立つヒマラヤスギ。自然と共にある空間を象徴する存在。
インド民族画とは?3つの代表的な様式
ミティラー画(マドゥバニー画)
北インド・ビハール州に伝わる伝統絵画。
特徴
・細密な線描
・幾何学模様
・神話や自然を象徴的に表現
写実でも抽象でもない、祈りと物語が重なる独特の世界観が魅力です。
ミティラー美術館内の絵画「チャクラ(ヴィシュヌ神が持つ円盤)」ミティラー画コレクションのなかでも人気が高いゴーダーワリー・ダッタさん作です。SHOPで販売されているおしゃれなトートバックの絵にも使われています。

インド・ミティラー地方に伝わる伝統絵画。神話や自然を象徴的に描いた作品。
ワルリー画とは?
ワルリー画とは?
インド西部のマハーラシュトラ州ターネー県に居住する先住民族ワルリー(インドに住む500に及ぶ部族のひとつ)によって描かれる壁画。
ワルリー族は農耕で生計をたて、季節的に漁労や狩猟に携わる人々もいるそうです。森羅万象に精霊が宿ると考え、万物を育む女神を拝みます。素朴な生活と精神によって描かれる独特の様式を持っています。
米をすりつぶし水を混ぜただけの真っ白な絵の具と竹を削ったペンを用いて、赤土を塗った壁に、繊細でリズミカルな線描と三角形や矩形(かねがた)、円などの組み合わせにより展開される自然との畏敬に満ちた交感の世界。 ワルリー

ワルリー画で描かれた飛行機のモチーフ。伝統的な表現の中に現代的な要素が融合している。

ワルリー画で描かれた生命の木。人々の暮らしと自然が一体となった世界観が表現されている。

ワルリー画で描かれた列車のモチーフ。伝統的な表現で現代の風景が描かれている。
たくさんの絵葉書にもなっていますよ。購入してきた中の一枚はすでに知り合いのもとへ…
なぜ自分がこのワルリー画に惹かれたのか少しわかった気がします。
ゴンド画とは

ゴンド画で描かれた動物。細かなパターンと色彩で生命のエネルギーが表現されている。
中央インドのゴンド族による絵画。
特徴
・鮮やかな色彩
・細かいパターン模様
・自然や動物との共生
1枚の絵の中に「森の命」が宿るような感覚があります。
埴輪かと思った!たくさんのテラコッタもありました!
ここでは、現地アーティストが数か月滞在しながら作品を手掛けているそうです。テラコッタもです。たくさんのテラコッタを鑑賞させていただきました。ここで生まれた作品たちは、インド本国でも見ることができない貴重な作品、ここで制作活動をされているのですから…
写真にありますが、ここで作られたテラコッタは日本の土で作られています。瀬戸、青森、御所川原の土だそうです。人類の生活と古くから関係してい陶器。大地は母なる神といわれ、陶工は宇宙の創造者と言われる地方もあるそうです。

ミティラー美術館で制作されたテラコッタ作品。素朴で温かみのある表情が印象的。
実際に訪れて感じた魅力
雪に包まれた美術館は、ただの展示空間ではありませんでした。
・静寂
・自然
・時間の積み重なり
それらすべてが作品と一体になり、まるで祈りの中にいるような感覚がありました。
現実と向き合う美術館
館内には雨漏り対策のバケツやシートも見られます。これは老朽化によるものですが、同時に「この場所を守り続けている現実」でもあります。震災や豪雪を乗り越えながら、活動は続けられています。
アクセス・基本情報
施設名:ミティラー美術館
所在地:新潟県十日町市大池
入館料:大人500円
営業時間:10:00〜18:00
休館日:火曜日
アクセス
・十日町駅から車で約15分
・ほくほく線利用可能
ミティラー美術館の名前の意味や、この土地に流れる祈りの文化については、こちらの記事で詳しくまとめています。
まとめ ミティラー美術館は“感じる美術館”
都市の展示とは違い、
・自然
・時間
・人の営み
すべてが重なり合う場所です。
インドの民族画に触れるだけでなく、自分自身の感覚を静かに取り戻す場所でもあります。
伺ったときには長谷川さんは雪かきで忙しそうでした。そして、建物内は老朽化のため雨漏れがところどころにあり、バケツが置かれていました。サイトを確認するといろいろなボランティアを募集しているようです。
私自身は拝観料の他にポストカードの代金と心ばかりのドネーションをさせていただきましたが、サイトから寄付もできるようです。
美術館活動継続のためのご支援をお願いいたします。
1982年より廃校になった旧大池小学校を利用して美術館活動を行ってきました。これまで 2004年の中越大震災、2011年新潟・長野県境地震、毎年3-4mの積雪にも負けず美術館を維持・管理してきました。
たとえ小さな美術館でも一堂にきちんと集めればいつか世の中の役に立つのではと考え、収集、調査、展示を継続し、1988年以降は本国より描き手を招待し、日本各地での展覧会の他、美術館に滞在(アーティスト・イン・レジデンス)して作品が生まれていきました。この制作活動を通して、日本でミティラー画およびワルリー画等の創造的で人々を感動させる新しい作品が生まれることになっていきました。これらはインド本国でも見ることができない貴重な作品となっています。
一方で、建物は震災や大雪、長年の老朽化によって、様々なところに傷みがみられます。限られた人員、ギリギリの経営状況で、屋根の雨漏りもスタッフが自ら屋根に登り懸命に直してくれています、完全には直しきれません。館内では作品に透明なシートをかけたり、桶を置いている状態が長く続いています。
みなさまから美術館活動継続のためのご支援を頂ければ幸いでございます。
https://mithila-museum-shop.square.site/fund (寄付の受付)

ミティラー美術館で購入できるポストカード。ワルリー画などの作品が手軽に楽しめる。
公式サイト:https://mithila-museum-shop.square.site/


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