心と体

バシシュタとは?偉大な聖仙の教えと『ヨーガ・ヴァシシュタ』に学ぶ心と世界の本質

心と体

ここ数回のヨガレッスンで、たまたま目の前の生徒さんがそれぞれこのアーサナを要望され、ご一緒に練習すると言うことが続き、この聖人の名がつけられているアーサナや背景を振り返ってみました。

バシシュタアーサナ

バシシュタとは?聖仙が語る心と世界の本質

インドの古代聖典に登場する聖仙バシシュタ(Vasiṣṭha)は、宇宙の真理を見通す智慧者として、今も多くの人に影響を与え続けています。

彼は『ラーマーヤナ』に登場する若き王子ラーマの精神的導師でもあり、ヴェーダンタ哲学の深淵を語る『ヨーガ・ヴァシシュタ』の語り手として知られています。

バシシュタの教えの核心

バシシュタの教えの根幹にあるのは、「心こそが世界の原因であり、自由も束縛も心次第である」という深い洞察です。

この世界が苦しみに満ちていると感じるのも、平和に満たされていると感じるのも、すべては心の在り方にかかっている――それがバシシュタの哲学です。

ラーマとバシシュタの対話:魂の目覚めの物語

若きラーマ王子は旅の途中で人々の苦しみを目の当たりにし、生きる意味に深く悩み始めます。

その悩みに対し、バシシュタはこう言います。

「ラーマよ、その苦悩こそが魂の目覚めの兆しなのだ。

外の世界に答えはない。見つめるべきは、汝の内にある“心”なのだ。」

こうして始まったのが、7000以上の詩節から成る大哲学書『ヨーガ・ヴァシシュタ』です。

世界は心の投影 ― 哲学的な詩句から

バシシュタの言葉を、いくつか原文付きでご紹介します。

「世界は心の映し」

चित्तमेव हि संसारः।

cittam eva hi saṁsāraḥ

「心こそがこのサンサーラ(輪廻)である。」


心が対象に執着しているとき、私たちは束縛される。

心が静まったとき、そこにこそ自由がある。

 

夢の王国に生まれた男 ― バシシュタのたとえ話

バシシュタは多くのたとえ話を用いて教えを説きました。その中でも特に印象的なのが、「夢の中で王になった男」の話です。

夢の中で成功し、栄華を極めた男が、ふと目を覚まします。

目の前にあった王国も妃もすべてが夢――

「この現実も、いつか夢のように消えるのではないか?」

この問いが、私たちを「真の目覚め」へと導きます。

真我(アートマン)に目覚める瞬間

対話の終盤、ラーマは静かに目を閉じ、こう言います。

「私は光である。変わらぬ気づきそのもの。

世界が浮かび沈もうとも、私は静かにそれを見ている。」

この気づきこそが「解脱(モークシャ)」の体験であり、心を超えた静けさそのものです。

現代に活かすバシシュタの智慧:5つのメッセージ

①心の在り方が世界を決める

原典より:

“यथा भावो तथा भवति”

yathā bhāvo tathā bhavati

「心の在り方のとおりに、現実は形づくられる」

現代への応用:ストレスフルな社会の中では、「外の世界に原因がある」と思いがちですが、実は「どう受けとるか」がすべての体験を決めている。気づきと観察の力を育てることで、日常は穏やかに変わっていきます。

②心が波立てば世界も荒れる

原典より:

“मन एव संसारः।”

mana eva saṁsāraḥ

「心こそが輪廻である」

現代への応用:不安や焦りが繰り返しやってくるとき、それは“心の波”の働き。それに飲まれず、波を眺める沈黙の時間(マインドフルネス、瞑想)を持つだけで、心は自然にそのうねりを静めていきます。

③行為の中に静けさを見出す

原典より:

“वृत्त्यभावे तदा मौनं न किञ्चिदपि दृश्यते।”

vṛtty-abhāve tadā maunaṁ na kiñcid api dṛśyate

「思考が沈んだときにこそ、真の沈黙がある」

現代への応用:スマホ・情報・会話・タスクに追われがちな私たちは、「沈黙」を恐れがち。けれど、ほんの数分でも「静かな時間」を取ることで、本当の自分の声や直感が聞こえるようになります。

④自由はもともとある

原典より:

“मुक्तिः स्वभावतः पुंसा न मुक्तिः साधनैर्यतः।”

muktiḥ svabhāvataḥ puṁsā na muktiḥ sādhanair yataḥ

「自由は修行の果てに得るものではなく、すでに本性として在る」

現代への応用:「もっと努力すれば、自分は“よくなる”」と思ってしまう人へ。あなたはすでに今この瞬間、満ちていてよいという視点が、安心と自信を育ててくれます。

⑤世界は内面の投影である

原典より:

“चित्तमेव हि संसारः”

cittam eva hi saṁsāraḥ

「この世界は心の映しである」

現代への応用:他人の言葉、社会の評価、外の景色…そのすべてに反応する前に、「これは自分の心の投影かもしれない」と立ち止まること。その習慣が、本当の選択と自由への扉になります。

結びに ― バシシュタは今も生きている

『ヨーガ・ヴァシシュタ』は、ただの古典ではありません。それは、心の混乱と苦しみを超え、「本来の自分」へと立ち返る道を示す、現代にも息づく智慧の書です。人生に立ち止まったとき、内なる静けさに帰りたいとき、バシシュタの言葉がそっとあなたのそばに寄り添ってくれるはずです。

今回は、アーサナ練習からの気づきを書かせていただきました。ありがとうございました。

 

参考文献・関連書籍

  • 『ヨーガ・ヴァシシュタ』訳注(Various Publishers)
  • Swami Venkatesananda 編訳『The Supreme Yoga』
  • 「アドヴァイタ・ヴェーダーンタ」入門書各種

 

 

 

 

 

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